れるのを、合作では、それが防げる。智恵を持ち寄ってパズルの高層建築を骨組堅く組み上げて行く。
 十人二十人となっては船頭多くして船山に登る、という怖れになるが、五人ぐらいまでの合作は巧く行くと私は思う。
 日本にも、職業作家の合作は雑誌社で試みることがあったが、職業作家が自分の仕事片手間にやってはロクな智恵が集まるはずがなく、結局、一人の智恵にまかせることになるか、連鎖作品というような愚にもつかないものになってしまう。
 まだ素人の、純粋の愛好家が、夫婦でやるとか友達同志智恵を持ちよるとか、つまり好きのあげくにやみがたい興味と情熱をもって、智恵を合せてパズルを組みたてる。最も家庭的な手工業品、いわば合作の工芸品、制作自体が、家庭娯楽というものだ。
 色々と職業の違う人が集まって合作するのも面白かろう。筆の立つ人が一人いることも必要だ。合作は、多作しても、智恵の持ちよりで、種のつきることも少いに相違ない。十年二十年、口をぬぐって、架空の一人の作家を、こしらえあげて、すましている。これまた、妙ではないか。
 雑誌記者も、作家の自然発生を待たずに、自分の手で、合作々家を組み立てゝ育てるのも、
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