本の文学者は今まで探偵小説とは怪奇小説と考え、食わず嫌いの傾向であったが、推理小説というものを知ったら、面白がるに相違ない。なぜなら、彼らは大概、碁か将棋かが好きであるが、推理小説は、碁や将棋よりも軽快で複雑なゲームの妙味があるからである。藤沢桓夫氏など詰将棋に工夫を凝らすぐらいなら、大いに推理小説に工夫を凝らして貰いたいと私は思う。
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推理小説は職業化するとダメになり易い性質のものであるから、年来の愛好家が、愛好のあげくに、新工夫を凝らして戯作するにふさわしいものだ。探偵作家は、たいがいモトをただせば愛好のあげくの余技から始まるものであるが、名作を発表する、次々と多作を強いられて、職業作家となると、マンネリズムにおちいって、駄作を濫発するようになる。
多作して駄作を作らぬ方法として、私は探偵作家に合作をすすめたい。
外国には二人、三人合作して一人名前の探偵作家はかなり存在するのであるが、日本にはまだ現れないようである。
推理小説ぐらい、合作に適したものはないのである。なぜなら、根がパズルであるから、三人よれば文殊の智恵という奴で、一人だと視角が限定さ
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