れども、一般の作家は、こうは行かない。職業化して多作を強いられると、勢い推理小説以外の怪奇小説とか、スリル小説、ユーモア探偵というようなもので、お茶を濁すということになる。
江戸川乱歩氏などは、日本の探偵作家に稀れな論理的な頭脳を持った作家で、彼の探偵小説批評、本陣殺人事件の批判などを見るとその資質を充分うかがい得るのであるが、そして又、彼の探偵作家としての初期の作品は極めて独創的な推理小説から出発しているのであるが、職業作家として多作を強いられて後は、怪奇小説に走らざるを得なくなった。
もっとも、キングとか富士という大衆雑誌の読者にとっては、推理小説はうけいれられない。勢い怪奇小説になる。これは一つは編集者の責任だ。日本在来の娯楽雑誌の編集者は、推理小説を愛好するだけの趣味のひろさ、教養の高さがなかったのだ。
元来、推理小説は、高度のパズルの遊戯であるから、各方面の最高の知識人に理知的な高級娯楽として愛好されるのが自然であって、最も高級な読者のあるべき性質のものであるが、日本に於ては、推理小説でなく、怪奇小説であったために、探偵小説の読者は極めて幼稚低俗であったのである。
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