れゝばよろしいけれども、万事につけて、さう都合よく運ぶものではない。
 私が新カナヅカイの委員の人々が、やりすぎた、といふのは、そこのところで、読みにくゝしてはいけない。
 先づ第一に暫定的だといふけれども、相当決定的な御様子で、あんまり暫定的らしい面魂でもないのが第一の失策。いきなり大幅の変改をせず、半永久的な委員会をもうけて、常に少しづつ、変へて行く。変へるたびに、常に読み易く、覚え易く、便利になるやうに変へて行く。
 第一回目の変へ方としては、「やう」と「よう」とか、「い」と「ゐ」、「え」と「ゑ」、語尾の「ふ」と「う」、「い」と「ひ」、「わ」と「は」、まアそんなところ、不勉強な書生が最も悩まされるあたりに就て、その見当で変へるのが第一だと思ふ。
 私はカナヅカイも漢字もろくに知らない不勉強者だから、さういふツマラヌ心労や不満がよく分るのだが、委員諸家は学者方だから不勉強者の心事など御存知ないに相違ない。また、一般の作家、学者の方々も秀才に相違ないから、僕の不満反感に同情がないかも知れぬが、僕はどうも、「やう」だか「よう」だか、「ふ」だか「う」だか、「え」だか「ゑ」だか、そんな心労
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