た利益は、そして、今後も戦争が我々にもたらすと予想しうる利益は、これを戦争以外の方法に委譲する方策を立てねばならない。
戦争が我々にもたらしたものは何か。文明の発達、文化の交流、そして、それが今後に於ては、世界単一国家となり、それが戦争の最後の収穫となるべき筈であったであろう。
然し、もはや、ここに至って我々は、戦争の力に頼ってその収穫を待つことは許されない。他の平和的方法によって、そして長い時間を期して、徐々に、然し、正確に、その実現に進む以外に方策はない筈なのだ。なぜなら、兵器の魔力、ついに空想を超すに至ったからである。
私は胸の思いに急ぎすぎて、結論を先に述べてしまったのである。
★
今日、我々の身辺には、再び戦争の近づく気配が起りつゝある。国際情勢の上ばかりではなく、我々日本人の心の中に。
国際情勢に対して、私の言うべき言葉は、すでに前章の短文に、つくされている筈である。私は、然し、さらに日本の同胞諸友に訴えなければならない。
現在の日本は、戦争前のころ、否、日支事変のはじまりかけた頃よりも、さらに好戦的に見受けられる。
日支事変の当初は、
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