今、神通力と申しのべた。我々の祖先は、そして、すべての人類が、魔法とか、神通力とか、忍術などを考えた。そこには、人間の空想が無限にのべられ、祈られていた。人は空をとびたいと祈った。孫悟空はキント雲にのり、役《えん》の小角《おづぬ》は雲にのり、自雷也《じらいや》はガマにのり、猿飛佐助は何にも乗らずドロンドロンと空を走った。然し、我々の飛行機は、その夢を実現し、今や音よりも速く空を走っているのである。
エイと睨み、気合いをかけると、相手がバタリと倒れるという。そんなことは、なんですか。エイとヒキガネをひくだけで、相手の胸をぶちぬく。種子ヶ島の昔から、それぐらいの夢は、現実のものとなっていたのだ。
ゴーレムが暴れ廻ってプラーグの街をひっくりかえしたところで、ジュウタン爆撃以上にはやれないだろう。
まず大体に於て、人間の空想も、一九四五年八月六日のバクダン以前までは、科学とトコトンのところまで、行っていた。
我々の祖先の無限の空想力といえども、その魔法、神通力、忍術のすべてをあげて、八月六日のバクダンを夢みてはいないのである。夢みることができなかったのだ。このバクダンに至って、そのエネ
前へ
次へ
全23ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング