ければならぬ。
 多くの場合、戦争は、他国からの侵略に対して、自由の確立のために闘われてきた。日本は逆に他国を侵略し、その自由をふみにじって、今日のウキメを見たが、個人に於ける如く、国際間に於ても、かゝる侵略主義は、尚、跡を絶っていない。
 私は然し、戦争の効能を認めているのである。なぜなら、戦争は、文化を交流させ、次第にその規模が全世界的となるに及んで、帰するところは単一国家となり、いくたびかの起伏の後に、やがて、最後の平和が訪れる筈であるからだ。
 要するに、世界が単一国家にならなければ、ゴタゴタは絶え間がない。失地回復だの、民族の血の純潔だのと、ケチな垣のあるうちは、人間はバカになるばかりで、救われる時はない。
 然し、武器の魔力が人間の空想を超えた以上、もはや、戦争などが、できるわけはないのだ。こゝに至っては、もう戦争をやめ、戦争が果してきた効能を、平和に、合理的な手段で、徐々に、正確に、果して行かなければならない。
 国際間に於ては、戦争がある種の効能を果してきた如くに、各人の間に於ても、その各人の争いが、今日の法治国の秩序をきずいてきたのであった。
 国際間に於ては、単一国
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