のようなところに、人間の楽園はあり得ない。個人の自由がなければ、人生はゼロに等しい。
何事も、人に押しつけてはならないものだ。看板をかかげるだけで、自由の選択にまかせなければならない。看板に偽りある時は、自らその責任をとらねばならぬ。
こんな女に誰がした、という無自覚、無責任な、反文化的魂が、いたずらに世相に反抗をもらしたところで、いかなる進歩が有りうるであろうか。こんな女に誰がした、というような無自覚、無責任な魂は、反抗などすべきでなく、どこまでゞも、こんな女にされて行くがよろしいのである。
私は、闘う、という言葉が許されてよろしい場合は、たゞ一つしかないことを信じている。それは、自由の確立、の場合である。もとより、自由にも限度がある。自由の確立と、正しい限界の発見のために、各人が各人の時代に於て、努力と工夫を払わねばならないものだ。歴史的な全人類のためにではなく、生きつゝある自分のために、又、自分と共に生きつゝある他人のために。そして、それが歴史的な全人類につながる唯一の道でもある。
個人に於けるが如く、国際間に於ても、各国家の自由の確立と正しい限度の発見は、最後の目的でな
前へ
次へ
全23ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング