れ」
「一時間だけね。でも、もう、あんなことしないでね。死んだ主人のこと考えると、可哀そうだから。とても可愛がってくれたんですもの」
「あゝ、いゝとも」
 ともかく一安心。自宅の茶の間の灯の下でまぎれもなくキヨ子の姿を見ることができると、安堵の心は限りもない。御馳走を食べさせ自分は酒を呷《あお》って、ムリムタイに談じこむようにして、再び先日の不思議な思いを確認することができた。まさしく夢ではない。とりのぼせた一時の心の迷いではなく、まさしく目のあたり不思議な思い、たゞ一つ分らないのは女の心だ。
 あんなに堅いことを言うくせに、その身悶えや、夢中のうちに激しくもとめる情の深さは、どういうことだろう。全裸の全身を男に見られることなど一向に羞恥を見せず、される通りに平然としているのであった。
 キヨ子が商売女で有る筈はないが、最も下等な淫売と同じぐらい羞恥の欠けたところがある。断髪洋装ともなると、みんなコレ式のものかと、幸吉はその不思議にも、たゞ驚くばかりであった。
「こんど、いつ会ってくれるね」
「私は水曜日だけがヒマなのよ。あとの日は、洋裁の学校へ通ったり、残業の日だから。オバサンに知ら
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