出家物語
坂口安吾
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)屡々《しばしば》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]か
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)グニャ/\
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幸吉の叔母さんに煙草雑貨屋を営んでいる婆さんがあって、御近所に三十五の品の良い未亡人がいるから、見合いをしてみなさい、と言う。インテリで美人で、三十ぐらいにしか見えない。会社の事務員をして二人の子供を女手で育てゝいるが、浮いた噂もない。幸吉にはモッタイない人だけれども、あるとき叔母さんに、事務員じゃ暮しが苦しいから、オデン屋の小さい店がもちたい、と言った。それで、ふと気がついて、
「私の甥がオデン屋をしているから、そこで働いてみちゃ、どうですか。マーケットの小屋を借りるたって二万三万はかゝりますし、素人がいきなりやれるものでもありませんよ。私の甥といったって、もう五十ですけど、戦災で女房子供をなくしちゃって、
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