僕と三宅君は例の如く親爺に頼まれて申訳ばかりに二日間ぐらゐは心当りを探してみた。立命館の予科の山口といふのを頼りに、この学校には友達二人教師をしてゐるし、予科の名簿をみんな見せてもらつたけれども、それらしいのが見当らない。僕達が名簿を睨んで唸つてゐると、何を教へてゐる先生だか知らないけれど、体格のいゝ先生が心配さうに近寄つてきて、娘はいつごろ家出しましたか。昨日です。それぢやア、あなた、と先生は声に力をこめて、まだ間に合ふ。さつそく神戸と下関へ手配しなきやアいけませんぜ。こゝを堅めてゐりやア大丈夫つかまるですよ、と一人で勝手に頷きながちさつさと向ふへ行つてしまつた。不良少女の巣のやうな喫茶店も廻つてみた。不良少女の足を洗つて大人になつた女給がゐて、これが娘の姉さん株の関係だつたが、流石に大人だから、自分だけいゝ子になるのは変りがなくとも、嘘でないことも教へてくれた。あれぐらゐの年頃の不良少女は男としよつちう遊んでゐても、めつたに肉体的な関係にはならないものだ、といふのであつた。さういふ危険性のある男は本能的に避けてゐる。けれども、肉体的な関係になつても別に不思議ではないのだから……
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