重い目をしないように、町外れの最後の店で仕入れようという次第で、彼から最後の店の所在をきいてきていたのである。家から持って出たのは書物と衣類とカンヅメだけであった。
 一夏の食料を買いこむと、大変なカサになった。米、ミソ、醤油、アズキ二貫目、砂糖、塩、ジャガ芋、カボチャ、キャベツ、等々。全部はリュックに入らないから、野菜類は二ツの南京袋に入れて縄でくくって、リュックの両側へぶらさげた。
 アズキ二貫目はなんのためかと云うと、私は無性者であるから、なるべく炊事の手間を省きたい。美食せずとも、生き永らえるだけの食物をなるべく簡単に食えればタクサンだという天性のナマケ者であるから、米を炊くと、オカズが必要である。主食とオカズ、二度三度と手間が多い。ところがアズキは主食とオカズを兼ねたようなもので、ユデアズキに砂糖をぶっかけてそれだけで一食すませることができる。実にカンタンであるから米食とアズキ食と一日交代にやったら、生命に別状もなく、アズキの日は手間が省けて助かるだろうというコンタンなのである。
 私はカボチャが好きではないのだが、保存のきく野菜はカボチャだと店の者が教えてくれたから、カボチ
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