我が人生観
(八)安吾風流譚
坂口安吾

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)渉《わた》って

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#道標の図(fig43202_01.png)入る]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ゴロ/\
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 谷川岳で、又、人が死んだ。いろいろ人の死のニュースの中では、一抹清涼で、平和な生活を感じさせてくれる。
 人間同士でひきおこす出来事は、祝儀不祝儀に拘らず、どことなく陰鬱なものである。人間臭というものは、何につけても身につまされるところがあって、暗い陰をまぬかれることができないものだ。しかし、相手が自然となると、人間も神様みたいなものである。
 私は登山らしい登山は殆どやっていないが、一度、山で死に損ったことがあった。しかし、話にならないのである。山というような山じゃない。里の人も名のつけようがないような、どこにでもゴロ/\している山で、おまけに、その麓、入口のようなところで死に損ったのである。
 同郷の先輩で、伴という弁護士をしている人が、若いころ、夢のような
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