るための手段ができないという三人のダンナのバカさ加減は、不可解に類する。
山際は三人づれに向ってナイフ一ツで仕事にかかったり、東京のマンナカで、二人降し、一人降しして、まるで、私をつかまえて下さいと頼んでいるような無邪気なことをしているのである。こんな間抜けな悪党というものはメッタにない。しかし、そのチャンスを全然つかむべく頭も手足も満足に廻転しない三人づれは、世代を超越してフシギである。山際に輪をかけて、珍奇なウスノロである。私には三人の旦那方の心事の方が特ダネ的に見えるのである。
手記をのせた新聞のミダシには「恋をするにもゲル(注、金のこと)」と、アプレ思想の一端をテキハツしたような扱い方であるが、手記の方は次のようなものである。
「(前略)今の社会を見ると若い世代が夢みる人生と(夢みるといっても決して童話的なものでなく)いうものが如何に多くのギャップ、ムジュンをはらんでいるか、少し考え過ぎると厭世的になるのも無理はないと思います。つまり余りにも物質的であると云うのでしょうか、幾らロマンチスト的に世を見ても所せん砂上の空中楼閣で、最後はリアリス的になるのです。所詮時代の流れに抗
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