訪ねることを思いとどまって、旅館で休む。まだしも、その時は(午後五六時ごろまでは)相当な抑制力が残っていたからであったろう。
 旅館で休むと、娘との肉慾の遂行という願望が、ヒョイと別の女、ただ肉慾の遂行という意慾にかわる。多少の自制心はあるのだ。女将に、女はいないか、とニヤニヤ言いかけてみて、しかし、それ以上にたって言う勇気もない。
 むしろ、旅館の戸口をくぐる前に、娘との肉慾の遂行をただの肉慾の遂行におきかえて、それをめざして、旅館をくぐったのではないかと思う。
 私自身の経験をヒキアイにだすと、お前のような助平は例外だと言われるかも知れないが、綱のきれた風船状態までくれば、もう人間は誰だって同じことだ。
 私はこの状態になると、あれかれの女友達を思ったあげく、最後には、パンパン宿をくぐった。実際の行動として行いうるのは最後にそれだけであった。この状態になると、きまったようにそうだった。
 彼は私のように気軽にパンパン宿をくぐる経験を持たないから、もっと余計なカラめぐりを重ねたに相違ない。
 私はそのとき、フンドシ一つで、見る女、見る女を片ッパシから口説いて、パンパン宿を巡礼しつづけ
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