く、ながめてゐて息苦しくなるやうな男の胸になぜとびこまなかつたのか、私は自分の性格が悲しくなる時があつた。そして私はミン平と六区の雑沓を歩いてゐるとき、我慢ができなくなつて、ミン平と腕を組んだ。ミン平は棒のやうに堅くなつたが、私の方からぐいぐいもたれかゝつてやると、彼もだんだん私の方にもたれてきた。私の心臓の音がミン平にきこえたら、と恥しさで真赤になつたが、そのくせ遮二無二すりよらずにゐられない動物力の激しさに、そして血の逆流する全身のあつさに、私は酔つぱらつた。
 私は不健全な女であるらしい。私は子供の時から芸者達のオノロケだの、肉体のよろこびだの、きゝなれて育つた。そして木村は精力絶倫といふのか年寄のくせに飽きもせず私のからだを求めるけれども、私は肉体のよろこびを感じたことがなかつた。私は木村がうるさくなり、にくゝなるのだ。
「木村さんは、絶倫だらうなあ」
 酔つ払つたミン平が、そんなことをいつてニヤニヤすると、私はぞつとしてしまふ。そして、真赤になつてしまふのだ。
「ミン平さんも、やつぱり、女と、そんなことがしてみたいの?」
 ミン平は考へる顔をして返事をしない。
「私はそんなこ
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