が先立つ必要があったと思う。
 この写真からみると、これを現に犯罪に関係ありと見たてる。現に盛運の相ではない。雑誌がとりあげる人物だから、ナニガシの人物らしいが、易者が顔を知らない所を見ると、時の人にしても、大物ではない。
 現在、こういう相貌の閑日月をしている人物で話題になりそうなのは、モグラ族である。徳田、野坂中尉から下は伍長、上等兵に至るまで近ごろは地下にくぐったから、モグラの一味かも知れん。
 しかし、アベコベのモグラもいる。右旋性左旋性というものは万事にあるもので、モグラの運動にも二ツの相異った本能をもつモグラがあるのだ。単行本で盛大に稼ぎつつ敗戦後一貫してモグラの運動をつづけている参謀がいるしその同族同類もいる。
 パージ族というのもあるが、パージ族というほど育ちの良いところはないから、とにかくこの閑日月は浪人の風格であることは確かなようで、すると、官庁か大会社で悪いことをしてクビになった奴かなア。しかし、単に時の罪人なら新聞紙上で顔にナジミがあるだろうし、その身の上判断なんてものを雑誌はたぶんとりあげない。すると、目下、浪人、とにかく理由あって、世を忍び、目下、苦労してる
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