女にとっては、献身が結局最後のそして最高の商品価値をなすものなのである。
 男女同権などと称したって、経済的に女が男に従属する限りは、どうにもならない。男女共学も結構、男が女をエスコートする風習の移入も結構。男女の外面の生活の形式がどう変ろうと、経済的に女が男に従属する限りは、結局、男が最後に選ぶ女の美徳は献身ですよ。
 同じ職場で働いていて、恋愛時代は経済的に独立し合っていて、男の方が女の方にサービスするような恋愛時代がつづいても、結婚して女が男に経済的に従属したならば、愛情の自然の発展が献身に高まらないと、いつかは男は他の女の献身へ走ってしまう。
 女房に献身のある限り、オメカケの容姿の美しさ、若さ、天性の娼婦性、性愛の技巧等が敵に兼ね具わっても怖るるに足らぬが、オメカケに献身があっては、女房もダメである。特に、忠義と献身をとりちがえている女大学の優等生は、理論的にいかにオメカケを撃破する力があっても、実質的にオメカケを撃破することは不可能なのである。
 経済的に女房を従属せしめている亭主は、女房の献身に対しては人生唯一の己れの棲家をそこに見出しているもので、本当に己れの城であると
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