のさい批判するのは遠慮したいのでございます。しかしもし許されるならば華頂家に戻って子供の面倒をみてもよいとも考えています。
〔第二〕私は世間がどう非難しようとも戸田さんと結婚する決心でございます。
 兄閑院春仁と主人がこんどの事件で示した態度はあまりに私の立場を無視しているのではないでしょうか。私はもっとなぜ私がこうなったかを理解してほしかったのでございます。
 戸田さんと二人で、愛情で結ばれた新しい生活を勇気をもって進みたい。
[#ここで字下げ終わり]

 元宮家の人々も人間に変りはないし、人間のもたらす事件の解決法に変りのある筈もない。この種の出来事は諸方に多くありうる事件であるが、どこの家の出来事にしてもいたましい出来事であることにも変りはない。
 華頂博信氏は事に対処して立派であったと云える。こういう出来事に当って、華頂氏の立場におかれた人間が半狂乱の逆上的忿怒や絶望を味うことがないとすれば、その非人間性はイカサマ師の天性に類するもので、賞讃さるべき理由は見出されない。ゲーテとナポレオン、家康と秀吉はそれぞれ甚しく性格は違うけれども、こういう出来事に対してはむしろ人の何倍も逆上
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