の女は文士の娘にも百姓の娘にもパンパンにもいる筈のもので、ちッとも珍しいものではなく、陳腐にすぎるぐらいであるが、とにかく一応利巧でなければ、人間や人間の常道は分らんです。こういう人は、自分で気がつくまでは、何を云われてもダメなものさ。
 戸田という人は、これはもうイイ加減な人さ。イイ加減でない人間ならもっと立派な方法をとりもし、言明もしたに極っています。
 最後に宮様に申上げるが、あなた方が同族結束する気持は大いに結構で、特に今回の華頂、閑院両氏の処置に見られる他への愛情の深さと思いやりは切なくなるほど素晴らしいものに思われましたが、それが同族同志だけで、他の階級の人間は自分たちとは違うもの、みんなラスプーチン的怪人物的なものときめこまれているような手記や言葉の様子は、どうも、よろしくないようです。
 第一に、もっと人間を知らなければいけません。人間を知らないために、こういうことが起ったのですが、人間を知らぬということは決して上等なことではない。
 人間を知るなんて下賤なことだとお考えなら、それもマチガイ。
 だいたい人間通というものは貴族社会から起ったものですよ。平安朝の昔もそうだ
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