みではなく、華頂氏に対する謝罪のマゴコロがあり、そのマゴコロあるによっても、あえて妹のスキャンダルを公表せざるを得なかったような正義感、それに類する清潔さを感じうるように思う。
彼がついに窮して手記を公にした心事に対しても、私は同感せざるを得ない。だがそのあとが、私はもう書く気がしないんですがね。まア、仕方がない。
★
とにかく、華子さんは、利巧な女ではありません。こういう人のこういう場合は方々に例の多いことだが、勝手にしやがれ、と云うよりほかに仕方がないように私は思う。本人に善意やマゴコロや、より良く生きたいという必死なもの、切ないものが、なんにも有りやしないじゃないか。兄さんの心事は悲痛であろうが、他人の私から見れば、勝手になるようになるがいいさ、あなたの場合はそれよりほかに仕方がなかろう、と云う以外に何もないような気がする。生きる苦しみが自分にハッキリ分らぬ人だもの、仕様がありますまい。自分で勝手なことをやって、それを見つめてごらんなさい。人間同志の話はそれから後にようやく始まるのだろうと思う。
あんまり虫のいいことを考えるもんじゃない。そういう性格
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