京高裁に控訴、二審では最初から否認したが認められず、さらに最高裁に上告、小林は上告趣意書で次のように述べている。「(前略)窃盗容疑で捕われた友人の内妻から弁護料を頼まれたので、そこで大内と相談して四月十九日以前二三回行ったことのある蚕飼村の爺さん(被害者)のところへ行き“米が一俵あるが買ってくれ”と頼んだところ“今日は金がないから明日にしてくれ”というので、翌日また自分だけで行くと、買出人らしいのが二三人いて爺さんは“今金が入ったから大丈夫”といった。その夜自分と大内は吉沼村の農家から俵を一俵持出し、畠の中で袋に入れかえ二人ともはだしになり蚕飼村へ行った、“今晩は今晩は”と何度もよんだが中から返事がない。そこで大内が“今晩は”と声をかけ雨戸をあけて家の中をみていたが“誰かが倒れているようだ”というので自分も行って月の光に中をのぞいてみると、土間に裸で爺さんが倒れていた。その中大内が“家の中に誰かいる”といったので驚きそのまゝ裏の方に逃げ約三丁程はなれた西方の神社まで夢中で逃げ、そこでもっていた袋を“こんなものを持っていると怪しまれる”と道路の側に捨てた(下略)」と述べ、次の四点について
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