不満をもらしている。※[#丸1、1−13−1]高橋の内妻吉田照子を証人によんでくれといったのに何故よばなかったか、※[#丸2、1−13−2]二人は当夜泥足で行ったのだから畳に足跡がついているはずだ、※[#丸3、1−13−3]大内が後から抱くようにして首を絞めたとすれば大内の着衣に血が着いていなければならぬ、※[#丸4、1−13−4]捜査主任は何故私に法廷でこの供述書に書いてある事をひっくり返す様な事をしてくれるなといったか。――しかし大内小林の二人についても、二人がヤミの取引なので「昼は具合が悪いから夜来る」と爺さんに話していたにしても、深夜二時頃というのはあまりにも常識外れではないかというような疑問が残らぬわけではない。結局上告棄却となり無期が確定、服役したものであった。
しかるに沼田少年の自供は小林大内が強制せられて云われる通りの自供を行ったという兇行事実と符合するのみでなく、使用した兇器、鉈《なた》、薪、フンドシ(絞殺用)等も現場と符合し、特に「殺した後で屋内を物色していると、外で足音がきこえたので仏壇のかげに隠れているとヤミ屋風の男が中をのぞき死体を見てビックリして逃げ去った
前へ
次へ
全46ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング