評を加えることを許されないし、その先へ読み進む限りは誤読されるイワレはありません。が、とにかく若干表現上の不備、練り方の不足があって卒読者を誤読せしめる怖れはあったようです。
あとから真犯人が現れた話
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さる五月十二日、東京丸の内署に沼田という一人の少年(一八)が「茨城県の堂守殺しの犯人は私です」と自首して出た。自供をきいていると犯行当時の模様についてあまりにも詳しく信憑性があるので同署では東京地検に連絡して堂守殺人事件を調べてみると意外にも次の事実が明になった。問題の事件は昭和廿三年四月廿一日茨城県結城郡蚕飼村の観音堂の中に卅年前から住んでいたヤミ屋の青柳宇一郎という六十九歳のお爺さんが何者かに頭を割られ絞殺され現金千円を奪われていたという事件で、現場付近に遺留されていた米の入った乞食袋を手がかりに、同月廿五日容疑者として住所不定小林三郎(三八)を検挙、続いて廿八日共犯として住所不定大内末吉(三四)を逮捕した。二人は警察、検察庁の調べに対して直に犯行を自供したので起訴され、一審の水戸地裁下妻支部でも犯行を認めたのでいずれも無期懲役の言渡しをうけ東
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