彼女の特別な見解を与え、解釈をほどこしている次第ですが、その限りの言い廻しとしては、論理もよく行きとどいてもいるし、分り易くもあるし、言葉穏やかでもあって、決してガムシャラに「どんらん飽くなきジャーナリズムの酷使」が林さんを殺した、と有無を云わさず、きめつけているワケではないのです。
けれども論理的に行き届いた解説をするに先立って、いきなり「ジャーナリズムの酷使が林さんの死を決定的に意味づける結果となった」とあるから、一応そう云いきったように見え、そのあとにテイネイな解説や補足があって、決してそうガムシャラに言いきったわけではないということが、そこまででは分らない。そしてその主旨の言葉はそこが終りで、一応そうきめつけたようにとられ易い弱点はある。すくなくとも、そこまでザッと目を走らせて、分ったような気になって、あとを読まなかった人にとっては、その意味にとられる怖れはあるようです。
もっとも、それは勤めの往復の電車の中でザッと目を走らせる読者からそんな誤読をうける怖れがあるという意味で、批評の筆をとる者は当然全文を精読する義務がありますから、これは別です。批評家が中途で読み止まって批
前へ
次へ
全46ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング