が、葉のしげった樹木の下につくるから、それほどでもないということであった。
 でてきたパンパンは子供をだきとって、
「かんべんして下さいな。生活できないから、仕方ないんです。まだ、こんなこと、はじめたばかりなんです」
「嘘つけ。三年前から居るじゃないか」
「ええ、駅のあっち側でアオカンやってたけど、悪いと思ってね、よしたんです。そして、たかッてたんです。だけど、子供が生れたでしょう。タカリじゃ暮せないから、仕方なしに、やるようになったんですよ」
 たかッていた、というのは、モライをしていたという意味だ。光の中で見ると、二十三四、美人じゃないが、素直らしい女で、痛々しい感じだ。
 アオカンだの、植え込みの蔭で立ったままだの良くても掘立小屋という柄の悪いこと随一の上野だが、それだけに、ここのパンパンはグズで素直で人が好くて、三日やるとやめられないという乞食のようにノンビリしたところがあるのかも知れない。
「今日だけはカンベンして下さい。まだお金ももらわなかったんです」
「よし、よし。今日はカンベンしてやる。しかし、な」
 巡査は私に目顔で何かききたいことがあったらと知らせたが、私はききたい
前へ 次へ
全50ページ中45ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング