けこむ。我々もひとかたまりに、それにつづく。
我々の眼の前に懐中電燈の光の輪がパッとうつッた。掘立小屋だ。一坪もない小屋。天井も四辺もムシロなのだ。地面へジカにムシロをしいて、それが畳の代りである。
ムシロの上に毛布一枚。そこに一対の男女がまさしく仕事の最中であった。仕事のかたわらに五ツぐらいの女の子がねむりこけている。
私がそれを見たのを見届けると、警官は光を消して、
「男は立ち去ってよろし。女は仕度して出てこい」
男がゴソゴソと這いだして去る。ちょッと又光でてらすと、女がズロースをはいたところだ。女はワンピースの服、ストッキングもそのまゝ、ズロースだけとって仕事していたのである。
小屋の外のクラヤミに三十五六の女が茫然と立っている。田舎者じみた人の良さそうな女だ。赤ん坊をだいでいる。この女が掘立小屋の主なのである。仕事の横でねていたのはこの女の子供。だいているのはパンパンの子供。仕事中預ったのだ。一仕事につき五十円の間代。ムシロづくりの掘立小屋の住人は、パンパンから相当の小屋貸し科をかせいで、それで生活しているのである。
天井もムシロだから雨が降ったら困るだろうと思った
前へ
次へ
全50ページ中44ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング