ていたが、無邪気でもあり、同時に、低脳でもあったが、ヨタ組は若くて、しかし老成しており、学業は出来ないが、判断は早く、行動はジンソクだった。両者に共通していたことは、スポーツのような子供っぽいことには深く興味を持ち得ないことだけであった。両者がケンカすると、若年のヨタ公が勝ったであろう。なぜなら、しつこさ、あくどさがあった。軟派の現場をとらえ、相手の女学生を輪姦するというようなことは確かにやっていたし、その日常も現実的で、花札のインチキなどを、身をつめて練習していたものである。
 後年、私が三十のころ、流浪のあげく、京都の伏見稲荷の袋小路のドンヅマリの食堂に一年ばかり下宿していたことがあった。
 はじめ私が泊ったころはタダの食堂、弁当の仕出し屋にすぎなかったが、六十ぐらいのここのオヤジが碁気ちがいだ。毎晩私に挑戦する。それが言語道断のヘタクソなのである。石の生死の原則だけ辛うじて知っているだけで、九ツおかせてコミを百だして、勝つ。つまり、全部の石が死んでしまうのである。それでもオヤジは碁が面白くて仕方がないというのだから、因果なのは彼にしつこく挑戦される人間である。
 バカバカしくて相
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