うなことは思いやられるのである。上野の杜のナンバーワン女形出身などゝいうと彼ではないかと気にかかり、男娼の写真がでゝいるなどゝきくと、わざわざ雑誌をかりたり取りよせたり、その中に彼がいないかと気がかりのせいなのである。彼の美貌というものは、当今騒がれている男娼ナンバーワンどころのものではなかった。水もしたたる色若衆であったのである。
私は上野というとヤマさんを聯想する習慣だったが、実地に見た上野ジャングルというものは、なんと、なんと、水もしたたるヤマさんと相去ること何千万里、ここはまったく異国なのである。
公園入口に百人ぐらいの人たちがむれている。男娼とパンパンだ。そんなところは、なんでもない。上野ジャングルはそんなところにはないのである。
山下から都電が岐れて、一本は池の方へまがろうとするところに共同便所がある。
「あの便所がカキ屋の仕事場なんですよ」
と私服の下にピストルを忍ばせた警官が指す。
「カキ屋?」
「つまり、masturbation をかかせるという指の商売、お客は主として中年以上の男です。この人がと思うような高位高官がくるものですよ。つかまえてみますとね、パンパ
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