ンピラ・アンチャンなどは、まだまだ可愛い方だと云わなければならない。
★
私は一九五〇年四月十五日という土曜日に、許可を得て、新宿駅前の交番に立番し、つづいて上野公園の西郷さんの銅像下の交番に詰め、お巡りさんの案内で、上野の杜の夜景を見せてもらった。
新宿の方は殆ど驚かなかった。なぜなら、我々が酔っ払った場合、又は酔っ払った周囲に於て有りがちなことが、ドッとまとめて起っていたにすぎないからである。
しかし天下名題の新宿だけあって、交番の忙しいこと、その半分は酔っ払いの介抱役で、死んだように酔っ払って交番へかつぎこまれ、何をされても目をさまさずコンコンとねむりつゞけているのがいる。何を飲んでこんな風になるのだか、その昏酔状態というものは尋常一様のものではない。二十二歳の新調のギャバジンの背広をキチンときたサラリーマンだった。介抱窃盗現れるのもムリがない。介抱窃盗というのは、介抱するフリをして身ぐるみ持ってくのを云うのだそうで、新宿のマーケットでは酔っ払いが主としてこの被害を蒙るのである。
もっとも、これには非常にまぎらわしい場合がある。グデン/\に酔って知
前へ
次へ
全50ページ中21ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング