が、その方法に於て、理性の低さということは、ここでも見逃せない。恋愛というものは、恋愛に一途でありさえすれば、他のいかなるカラクリにも勝ること万々で、必ず人をうつ性質のものである。恋愛に一途であって、世の悪評をしりぞけることが出来なかったタメシはない。すてられた女房や亭主に対する同情よりも、一途の恋人の方が必ず世評に於ても勝つのである。
 多少の道学者はすてられた女房や亭主に同情するが、ミーちゃんハーちゃんは常に恋人の味方であり、それがほゞ全般的な大衆の気分でもあること、古今東西、殆ど変りはない。
 彼らがもし恋愛に一途であり、恋愛のためにすべてを怖れざるの勇気がありさえすれば、彼らは政治的にも救われたのだ。カラクリを弄する必要はない。人間万事、そうだ。事に処してそれに殉ずるのマゴコロがあれば、すべてに於て救われる。
 大衆は正直であり、正義派だ。彼らはマゴコロに対しては常に味方で、一つのマゴコロを成就するために多少の罪を犯しても、マゴコロの純一なるによって他の罪を許してくれるほど寛大で、甘いのである。
 この点に於て、御両氏は策をあやまっている。
 御両氏の結婚を成就せしめんと努力し
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