た堤マサヨ代議士に至っては、さらにフンパンの至りで、文士と代議士では、考えること、為すこと、アベコベのようだ。私だったら、こういう友人の激励はゴメン蒙って、どうかお引きとり下さい、と頼む。
 厳粛なる事実があったから結婚させた、という。そんなもの、有っても無くても、いいじゃないか。ボクらにとって、問題は、二人が結婚せずにいられないか、いられるか、結婚せずにすむなら、結婚する必要はないだけの話である。情熱の問題である。
 厳粛な事実、とは何ですか。ニンシンのことですか。そんなものが結婚を余儀なくせしめる理由になるなら、すでに結婚して何人も子供を生んでいる先夫人の方が、より大きな厳粛な事実じゃないか。この女代議士は何を言うつもりなのだろう。
 一時のアヤマリということがある。若気のアヤマチというが、年をとってもアヤマチは絶えないものだ。まして未婚の天光光氏がアヤマチを犯すのは有りがちで、フシギはないのである。
 アヤマチは仕方がない。これを繰りかえさぬ分別が大切で、一度のアヤマチを生かして前途の指針の一つとし、二度と同じ愚を犯さぬように利用できれば、充分で、かかる工作を理性の力というのであ
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