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天光光嬢に関する限りは、その因果モノ的性格が気になるだけのことであるが、園田氏の場合になると、様相はガラリと一変する。
天光光嬢はフロシキ包みを連日にわたって持ちだし、墓前にぬかずき、結婚式場では泣いているが、これをリードする園田氏は徹頭徹尾理知的だ。すべてを客観し、構成しているようである。
この家出結婚をスクープした記者は、偶然の情報で、園田氏とレンラクがあったワケではないと云っているが、その情報というものをトコトンまで追求して行けば、正体はおのずから現われてくる。記者の云っていることは、情報は直接園田氏又はその近親から受けとっていない、というだけのことだ。
恋愛というものは、タッタ二人でやる性質のものだ。家出結婚というものも、二人だけの秘密ですむべきものだ。作為がなければ、決して洩れる性質のものではない。まして、女の父は一家心中するとまで云っている危険人物ではないか。その父の寝息をうかがうに、脱出の時間まで、きまっているとは、都合のよすぎる話であるが、もし、読者諸君にして冷静に考えれば、先ず第一に、カゴの鳥ではあるまいし、三十女の、レッキとした代議
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