結婚した。
代議士がミーちゃんハーちゃんと同じことをやってはイカンという規則はない。否。代議士もミーちゃんハーちゃんも同じ人間にすぎないのである。それをハッキリ自覚しておれば、天光光氏も因果モノにはならないのである。
五時十五分。家出して、男の車に迎えられて、走り行く先は墓地とくる。墓前にぬかずき、結婚式場では泣いて……大マジメというのは困るよ。どこにもウイットがない。明るく軽快なところはミジンもなく、自分を客観している理性が欠如しているのである。だから彼女の一挙手一投足、因果モノをぬけだしている要素が根抵的に欠如している。救いがないのである。
これを良く云えば、彼女はあくまで日本的だ。松谷家は代表的な日本人の家でもある。封建時代さながらの、何の理知もない、暗い日本の家なのだ。天光光嬢の行為は、そのような原始日本の一番低い感情や生活を地で行っているだけのことで、その限りに於て、代表的な日本人でもあるわけだ。
ただ我々が、新しい生活、より良い生活というものを考えることを知らない人間でありさえすれば、天光光嬢の武家時代さながらの家出結婚をとりあげる必要はないだけの話なのである。
前へ
次へ
全23ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング