なのだ。言うまでもなく、子は父から独立している。
自分で果し得なかったことを人にやらせる。追放の政治家が黒幕となってロボットを立てる。天皇をロボットにして、号令を行う。そういうロボットを政治の前提として承認し、これを疑り、改良することを忘れている日本人の蒙昧が、この事件の性格でもあるのかも知れない。天光光正一の因果モノ的関係は、日本人本来の因果モノ性に由来しているのかも知れない。すくなくとも、新聞の筆法を見れば、松谷父子の因果モノ的蒙昧さは、新聞人の頭のレベルでもあることが分る。黒幕だのロボットが公認されている日本の政治の悲しさ貧しさ。日本の政治というものが、因果モノでしかない、という悲しい断定も詭弁ではないのである。
天光光を殺して一家心中するという。まことに狂的で不穏であるが、一家心中というのが日本によくあるのだから、笑うわけに行かない。代議士の一家だといっても特別なものではない。日本がそれだけなのである。
見たまえ。この父に対処する天光光嬢は、身は代議士でありながら、少しずつフロシキ包みにして身の廻りの物を持ちだし、みんな持ちだしてしまうと、父の寝しずまるを待って家出して、
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