よ。どこの家庭にも論争のあるのは当然で、ゴモットモの方が、どうかしているのである。
 独自の見解をまげる必要はないではないか。あらゆる意見が同一でなければ夫婦とは申されないというなら、先ず夫婦というものは、この世に有りうべからざるものだと考えてマチガイはない。
 小さな好みの問題ではなく、両人ともに政治家であり、表看板の政治的見解が相違していては致命的だという見方が多いのであるが、だいたいに於て見解の一致ということは一方を奴隷として見る場合にのみ有りうることで、理知というものは、各人の立場の相違というものを基本的に認めているものである。
 人格を認め合い、信頼し合えば、友情はなりたつ。結婚生活も同じことで、友情がなりたてば、足りる。両々軽蔑し合えば、もうダメであるが、敵と味方でも尊敬し合うことはできるもので、その限りに於て、政見を異にする故に、夫婦生活が持続できないということはない。
 二人の政治意見がおのずから歩み寄ってもよいが、歩み寄らなくともよい。
 男女二人のツナガリは常に独自のものであるから、どういう意想外の二人が結びつくのもフシギではなく、その二人が現に在りうれば、そういう
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