上の人物は、ズデンドウとモンドリうッてひッくり返るのである。
ホンモノの秋田犬の五分の一もあるなしのウチのチンピラ日本犬でも、ユダンしていると、電信柱のところで、ひッくり返されてしまう。小さくてもバカ力だけは大そうなもので、ホンモノの秋田犬ときては、どれほどユダンもスキもなく構えていたって、必ず電信柱のところでズデンドウは確実まちがいなしである。チャチな日本犬を飼っただけでも、ズデンドウの確実無比なのが手にとる如くに分るものだ。あの図体のバカ力は羽黒山程度でどうにかツリアイがとれるかも知れんが、彼といえども自転車に乗ッかッとればズデンドウはまぬがれない。
自転車で散歩させる手がないとなると、奴めの世話をさせるために怪力の犬係りを用意する必要がある。だいたい大館では朝晩一時間ぐらいずつ歩かせているようだ。歩かせて一時間というのは、どういうものだろうか。大型の西洋犬だと、自転車で一時間でも、あるいは少いかも知れない。秋田犬のあの図体で歩かせて一時間は、ちと不足ではないでしょうか。図体に似合わず、食べる量が多くはないようだ。秋田犬が虚弱になった原因はつまらぬ闘犬ごッこに精を入れて、ノルマ
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