安吾の新日本地理
秋田犬訪問記――秋田の巻――
坂口安吾
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)美髯《びぜん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)到着|匆々《そうそう》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ウジャ/\
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私は犬が好きだ。何匹いても邪魔にはならないが、小犬一匹の遊び場にも足りないぐらい家も庭もせまいから、欲しい犬も思うように飼えないのである。目下生後五ヶ月のコリーと一歳三ヶ月ぐらいの中型の日本犬がいるだけだ。
コリーは利巧な犬である。牧童の代りに羊の群を誘導して、群をはなれる羊があればつれもどり、また外敵から守って、人間以上の働きをする犬だ。シェパードには専門の訓練師が必要だが、コリーの方は、番犬に必要程度の訓練なら主人でも間に合う。時間の観念が正確だし、自分の欲望を抑えて主人の言いつけに服する力があるし、血気にはやるということがない。よその犬には親しみも持たないし敵意も持たない。その代りには人間が大好きで、誰とでも仲よしである。誰にでもペロペロなめて親愛の情をヒレキするが、よその
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