ければならぬ必要も、必然性も考えられんじゃないか。
シェパードなどもむやみにケンカしたがる犬ではない。訓練のないシェパードが立ち上るようにしてよその犬に吠えたて、主人が綱を押えて必死に制しているような図を道で見かけるが、あれはたいがいケンカをしたがっているのではないのである。愛犬家は吠え声で分るものだが、たいがい「遊びましょう」と云ってよその犬に吠えかけているのだ。シェパードを飼って正式に訓練しないような主人は本当に犬の気持は分らない人が多いにきまっているから、自分の犬の言葉が分らない。散歩のさせ方も不充分であるから、犬は遊びたくて仕様がないのが普通である。遊びましょうとよその犬に吠え訴えている言葉も理解できないし、その原因が飼い方の至らなさにあることも理解できないのである。よく躾けられたシェパードは決して猛犬ではないし、また本来、日本犬ほどケンカしたがる犬でもない。
コリーの如きに至っては、よその犬とケンカすることなど考えたこともない。はじめてコリーを散歩に連れだした当座は、よその犬が自分に吠えると、どういうワケで吠えられるのか理解に苦しむという顔をする。生後三ヶ月ちかいころから
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