型の日本犬を一しょに飼うと、日本犬の頭の悪さが身にしみて情なくなるのである。
 日本犬は主人と合せてようやく一匹ぶんの働きができるのである。家族以外の者には決してなれない。しょっちゅう遊びにくる友人も毎曰くる御用キキも、犬のお医者もダメである。鶏屋のオヤジサンは犬に吠えられるのが大キライだそうで、ウチの犬が店の前を通ると肉やタマゴをサービスしてゴキゲンをとりむすんでいるそうだが、全然キキメがない。無用な吠え方をしないように、すでに七八ヶ月も家の者が気を配っているが、全くキキワケがない。
 ただベタベタと、イヤらしいほど主人に忠義である。ワケも分らずに、ただベタベタと忠義というのは全く情ないもので、サムライ日本のバカらしさ、頭の悪さ、そのままである。自分の家の近所と、主人と一しょの時だけは無性に勇み立つ。むやみによその犬とケンカをしたがる。そのくせシェパードのようなはるかに強大な犬に会うとシッポをたれて逃げ腰になる。
 一般に日本では犬はケンカをするものと考えて疑わないが、これはチャチな日本産の犬どもだけの話ですよ。外国種の犬は犬同志でむやみにケンカをしたがるものではないし、ケンカをしな
前へ 次へ
全40ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング