るにすぎません。もっとも、そのほかに彼の異形のサマを説明して、顔が二ツだが、頂《イタダキ》合いて頸《ウナジ》なし、つまり二ツの顔の後頭部はピッタリとくッついて一ツになってるという意味らしい。また、膝ありて膕踵《ヨボロクボ》なし、ヨボロクボはクビスの由ですが、この文章からは様相の見当がつきません。
ヒダではこの怪人物を両面《リョウメン》スクナと云っています。書紀ではクマソか酒顛童子のような悪漢としてカンタンに殺されてますが、ヒダではこれが天の船で位山へついたという日本の主《ヌシ》で、大和の敵軍が攻めてきたとき、ひそんでいた日面《ヒオモ》の出羽の平のホラアナをでてミノの武儀郡下ノ保で戦い敗れて逃げ戻り、宮村で殺された。その死んだ地がヒダ一の宮の水無神社であるという。
スクナがひそんでいた出羽ノ平のホラアナは今もあってスクナ様のホラアナと怖れられて、そこへ誰かが登ると村に祟りがあると信じられております。私はそのホラアナ(鍾乳洞ですが)へもぐりこんできました。スクナ様の祟りかも知れませんが、ヒドイ目に会いました。残念ながらまったく半死半生でしたよ。
そこは高山から平湯、乗鞍の方へ五里ぐら
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