安吾の新日本地理
飛騨・高山の抹殺――中部の巻――
坂口安吾

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)仆《たお》して

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)蘇我|赤兄《あかえ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)させた[#「させた」に傍点]
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 飛騨(実にメンドウな字だから以後カナで書かせてもらいますよ)は日本の古代史では重大きわまる土地であります。
 隣りの信濃はタケミナカタの神がスワ湖へ逃げてきて天孫に降参したという国ゆずり事変の最後の抵抗地点で日本神話では重要なところだ。ところが、現天皇家が本当に確立の緒についたとみられる天武持統の両御夫妻帝(天武は天智の弟で、天智の御子大友親王≪弘文天皇≫を仆《たお》して皇位に即き、実質的には現天皇家の第三祖に当られる御方のようです)はヒダとスワの両国に対して特にフシギな処置をほどこしております。スワは信濃の国に属しておりますが、一時分離されてヒダ、スワと二国特別の扱いをうけた。その理由は国史の表面には一度も説かれておりません。特にヒダは古代史上、一度も重大な記事のないとこ
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