。平城上皇に薬子の乱が起ったために、高岳親王は廃せられて、空海の弟子となって仏門にはいった人です。
しかし、廃太子の真如がヒダへ行って千光寺をつくる前に皇太子恒貞親王のムホンに連座してヒダへ左遷された橘末茂がおります。このムホンというのが、また、どうも、これもヒダを相手にしてのカラクリのようだ。
先に帝たりし嵯峨上皇の死をキッカケに恒貞皇太子がムホンして捕った。ところが死んだ嵯峨上皇はかつて自ら高岳親王真如を廃太子にしているし、おまけにちょッと前に淳仁上皇の死を送ったばかりで、ここ何代というものは誰の代も例外なしに皇太子のムホンだなんだと廃太子つづきである。これもヒダのタタリかというような考えが強かったようだ。彼の遺言をよむと、それがハッキリします。人間死ぬのは当り前で厚く葬るほど愚なることはないから、棺はうすいのでタクサンだし、ムシロで包むがいい。着物もフダン着てるのでタクサンだ、という。まさか、首と胴を二ツにチョン斬って棺に入れろ、とは言わないけれども、殺されたヒダのミコが自分の先祖を埋められたと同じような扱いで自分の葬式をやれと遺言しているようです。
こういう遺言のあとで、
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