の子孫や帰順者の首長を国ツ神に仕立てて統治者の一族の如くにしてやることも必要であろう。
しかるに両面神話は、その最も主要な問題が肉親間の相続争いを各時代の悲劇として美化するだけのものではなくて、両面の一方には他人も含まれている。即ち肉親相続の悲劇と他人の天下を奪ったのとが相重なり合い、それによって両面神話を複雑にもしているし、両面神話の形式がどうしても必要であった必然性も現れているのである。それはなぜであろうか。
その「ナゼ」を物的証拠で推理するのはどんな名探偵でも不可能で、特に私のような素人歴史探偵には困難であるが、しかし、それをいくらか推理する方法がないこともない。
それを推理する方法は、新しく天下を平定した人たちが平定後に何をやったか、ということだ。現存官撰史から判断して、新統治者の第一祖は天智天皇であるが、しかし官撰史を必要とした当面の人々は天武の一族であるから、この天武、及びその皇后で次の天皇たりし持統帝及びその直系の帝らが平定後に何をやったか。それをシサイに見てゆけば何かの手ガカリはある筈です。ところが、たしかに驚くべき奇怪なことが行われておるのであります。
天武天
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