の事情に対応して朝廷方からワケの分らぬ方法で利用だか慰撫だかオベッカだか判断しにくい待遇をうけているので見当がついてくるのであります。それは後で説明しますがとにかく、伊勢はここに祭られた神の本当の故郷ではありません。それは文句なしにハッキリしておりましょう。
 神武紀に於てはその敵はウカシ兄弟である。これも両面スクナと同じであって、攻撃される方とする方とは、一方がクマソ的であれば一方は日本武尊的で、神武天皇の兄弟たり分身たる五瀬命の運命は日本武尊的ですが、その敵将の運命はクマソ的で、合せるとスクナの両面になる。そして実際はクマソと日本武尊の運命を一身に合せた悲劇的な運命の者の方が実は征服した方の正理をもつものでもあった、即ち日本の本来の首長であった、ということを五瀬命の兄弟分神たるものが征服者で正統の日本の第一祖たる神武天皇であることによって示されてもいると解しうるのであります。
 これと同じことを暗示していると思われる分身的兄弟の例は崇神垂仁時代をはじめその他の諸々にもその例を見ることができますが、それらがみんな同一の事件と、同一の人物をさしているものと見てさしつかえないかと云えば、
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