スクナヒコナが同一神の大国主をさしているらしいのが神話中の第一の大物で、次に神武天皇紀が登場人物の多くにわたって両面的に、フタゴ的である。
 神武天皇自身すでに五瀬命《イセノミコト》という兄があって、神武と共に力を合せて戦ううち日本平定直前にチヌ山城水戸で敵の矢に当り、古事記によると途中血だらけの手を洗ったところを血沼《チヌ》海と云い、人に負われて紀国男水門に行って雄叫びをあげて死んだと云うが、書紀は紀伊カマ山まで行って死んだ。とにかく死に場所はハッキリしないが、そのカマ山に葬ったとある。これも両面スクナの正史と伝説の両面、つまり正史においてはクマソ日本武尊の二ツによく似ています。五瀬命は恐らく伊勢大神宮の重大な隠し神様、荒ミタマだろうと思います。そして実際は今の天皇系ではなく反天皇系の大親分の運命を暗示する一ツでもあって、伊勢が内実はそういう面をもつ神でもあることは、伊勢と吉野と近江、それから隠され里のようなヒダ、スワ等のその後の史実が語っております。つまり主として天智後の戦争のたび、又はその平定後、そして平安京が本当に安定する頃までの期間というもの、それらの国々に対し、またその時々
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