屍体があがらなかった。この最後は日本武尊の屍体が白鳥となって飛び去り、墓がカラだというのに半分だけ似ています。尚、先帝の仲哀天皇自身も熊襲退治のとき敵の毒矢で死に、これがヒダのスクナ伝説のスクナの最後(敵の矢で死ぬ)に半分似ているし、兄大碓がサナケ山で毒蛇にかまれて死んだというのにも半分似て、矢と毒を合せると同じ一ツになる。なお似た話はタクサンあって全部はとてもここに書ききれません。
 武振熊《タケフルクマ》は国史上にたッた二度それも百何十年も距てて突如二度だけ現れて忍熊二兄弟の一方をダマシ討ちにし、次に両面スクナを退治しています。二度しか現れんのも双児や兄弟と同じ意味や同じ原則を示していると解し得るでしょう。
 そしてまた双生児やその類型の兄弟は一方が他の一方のカギの暗示である場合もあるし、兄弟二人の運命がまったくアベコベであるという意味を寓している場合もあって、つまり一方は被害者、一方は加害者のアベコベの二つを示す意味もある。
 つまり日本武尊は熊襲兄弟を殺した。その殺し方は女に変装して安心させておいて刺し殺した。ところが武振熊は忍熊王をだまして武器をすてさせて殺した。全く同じです
前へ 次へ
全58ページ中18ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング