鍾乳洞はいつの時代か人々が斧で穴をひろげた跡が歴然たるものです。十間も行くと四ン這いになるところがあるが、そこをくぐって廊下のようなところを這い登るとだんだん広くなって、相当の大広間になり、そのマン中あたりにナワのような太さの水流が落ちているところがあって、自然に石像のように変形した濡れ石ができていた。その広間も人工でひろげたものです。水気はわりに少く、天井の石をくずしてひろげたからツララもなく、水のたれるところに大きくても一寸四方ぐらいのカブトのようなのが出来てるだけです。相当の人数がひそみ隠れていられるでしょう。
 両面スクナはその形がシャム兄弟(一卵性双生児の背中がくッついて一体となったもの)のようですが、神話にはあらゆる畸形の怪物が現れますから、それらの何かは現実の畸形児に当然似ますけれども、もともと神話はツクリゴトで、そッくり現実的に解すのはなるべく避けるのが自然でしょう。
 私は千光寺の両面スクナ堂でこの像を見ましたが、背中合せに同じ一体の人間が一体になっております。前後両面全く同じです。そしてその頭は神功皇后のカミのような男装の女だか、女装の男だか分らんようなふくよ
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