ず、三番目の末ッ子を天皇にするよ、と言い渡した。しかし、天皇崩御のとき末ッ子が辞退して次兄に皇位をゆずった。この次兄が仁徳天皇だそうだ。こんな話が記紀にあるから、親も好みのアトツギを選ぶには子供に気兼ねがあったのだろう。選定相続は概して末ッ子に譲ることになり易い。末ッ子が一番可愛いいのが大概の親の気持らしいな。また末ッ子の母が一番若くて美人で、お気に入りなのも自然だろう。昔は子供の母がたいがい一々違っているから、尚さら事はメンドウであったね。
 長子相続は大化改新からだそうだが、どうだかね。しかし、いきなり壬申の乱が起ったほどだから、どうも天皇家の相続はうるさいね。藤原一族が勢力を得て、銘々が自分の娘を嬪《ひん》だの夫人だのというものにして自分の血縁を天皇に立てようと企むに至って、相続のたびに、否、常に相続をめぐって、お家騒動の絶え間なき連続のようなものだ。藤原一門自体が氏の長者だの関白をめぐって父子兄弟の絶え間なき争いでもあった。藤原氏にも三種の神器のようなものがあるのだね。これを、長者の印、朱器、台盤とやら云うね。朱器台盤というのは食事の道具らしいや。年に一度の大宴会に大臣諸公や代
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