ッと離れておりますから、どうぞ心おきなく」
「そうおッしゃッていただくと、ありがたいやら面目ないやら。あなた様にはいつも厚いお言葉をかけていただきまして、まことにありがたく身にしみておりまする。ブウ。ブウ。ブウ。これは甚だ不調法を」
「イヤ。お心おきなく。ホトケがよろこんでおります。私もちょッと、ブウ。ブウ。ブウ」
「オヤ。ただいまのは私でしたでしょうか。まことに、ハヤ」
「ただいまのは私です。私もいくぶんのオナラのケがありましてな。また、ブウ。ブウ。ブウ。これも私」
「これはお見それいたしました」
「実は今回のことについては私にも原因があるのです。お奈良さまほどではありませんが、私もかねてオナラのケがあるところから、人前ではやりませんが、家では気兼ねなくやっておりました。これが家内の気に入らなかったのですな。お奈良さまの場合はこれは別格ですが、私どものオナラは人がいやがるような時にとかく催しやすいもので、食事中なぞは特に催すことが多い。長年家内は眉をひそめておりましたが、私といたしましてもわが家でだけは気兼ねなくオナラぐらいはさせてほしいということを主張して先日まではそれで通してきま
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